新刊ピックアップ
脳を科学する時代
脳の表面積は新聞紙1枚程度です。しわくちゃに折りたたまれて頭蓋骨の中に納まります。そして大脳皮質の厚さは数ミリ程度で,
前野先生の冒険
本書の著者・
受動仮説とは何か?
意識を考える上で有名な研究があります。
リベット博士は,
時計回りに光の点が回転する時計のようなモニターを作成した。そして, 脳に運動準備電位を測るための電極を取り付けた人に, モニターの前に静かに座ってもらった。その人には, 心を落ち着けてもらい, 「指を動かしたい」 という気持ちになったときに, 動かしてもらった。 (中略)
つまり,
「意識」 が 「動かそう!」 と 「意図」 する指令と, 「無意識」 に指の筋肉を動かそうとする準備指令のタイミングを比べたのである。 この結果は衝撃的であった。
「無意識」 下の運動準備電位が生じた時刻は, 心で 「意図」 した時刻よりも約350ミリ秒早く, 実際に指が動いたのは, 「意図」 した時刻の約200ミリ秒後だったのである。 指が動くのが
「意図」 より遅いというのは, もちろん予想どおりである。一方, 運動準備電位が 「意図」 よりも350ミリ秒早いということは, 心が 「動かそう!」 と 「意図」 するよりも前に 「無意識」 のスイッチが入り, 脳内の活動が始まっているということを意味する。
思うよりも先に脳が意識しているなんて,
意識が無意識な処理に対して受動的に追随するシステムに過ぎないというのが,
意識とは心とは
意外と皆さん,
養老:西洋人は,
理性とか自由意志とか良心だとかとずっと何百年も言い続けてきました。 「自分がある」 という意識な幻想にとらわれているのです。でも, 実は, 意識というものを考えると, この意識は 「後知恵」 に過ぎないのです。 内田:後知恵?
養老:脳みそが生理的に動いてから,
その結果として意識が発生しているということです。つまり, 意識というものは, 『後出しジャンケン」 なんです。
脳,心,意識……最後は哲学に至る
前野教授は工学者的
前野教授は,
記事中で紹介した書籍
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脳の中の「私」はなぜ見つからないのか?――ロボティクス研究者が見た脳と心の思想史
ロボット工学者である前野隆司教授は,工学者の視点から脳の機能解明の研究をはじめて,「心は脳が作り上げた幻想である」という考え「受動意識仮説」に至りました。 本...